アカエイが未利用魚になりやすい理由

未利用魚なんて言わせない!!アカエイの有効利用について紹介しています。

近年、全国的に増加しているとされているアカエイ…しかし全国的にアカエイの魚価は低く、低未利用になっていることが多い…

なんでアカエイはあまり食べないの?

冷凍技術物流の発達で、もっと美味しい魚がすぐに手に入るようになったからだよ…

アカエイって美味しくないの?食べたことがないんだけど…

避けられる理由はいくつかあるんだけど、とっても美味しい魚だよ!!

アカエイが消費者から避けられる理由

アカエイが消費者から避けられる理由は大きく分けて3つほどあります。

アカエイが避けられる3つの理由

1つ目の理由は「エイ特有のアンモニア臭がする」です。

アンケート調査を行って分かったのですが、アカエイを一度も食べたことがない人でも、「エイはアンモニア臭がある」ということを知っており、先入観的に臭い食べ物であるという印象を持っている人が多いようです。

なぜアカエイはエイ特有のアンモニア臭がするのでしょうか?
科学的に理解することで納得していただけると思います。

まず大前提として、アカエイは他の魚類とは異なり、体内に大量の尿素を保持することで浸透圧を保っています

そのため、アカエイは餌料生物から得られたアンモニアから、尿素オルニチン回路と呼ばれる化学反応を使って、尿素を合成します。

私たち人間も肝臓で、毒性のあるアンモニアから尿素を合成しているのと同じで、アカエイも肝臓で尿素を合成します。

なお、アカエイをはじめとするエイ類・サメ類の多くは肝臓に限らず、筋肉でも尿素を合成することができることが分かっています。

アカエイは合成した尿素を、肝臓・筋肉に貯蔵し、血液中にも混ぜることで、体内浸透圧を外界水よりも高く維持しているのです。

これがアカエイは体内に尿素を多く含んでいると言われる理由となります。

しかし、体内に高濃度の尿素があると、タンパク質の構造が変化し、各種酵素反応を阻害するという弊害もあります。

そのため、サメ・エイ類は、TMAOトリメチルグリシン(尿素の毒性を弱める物質)も体内に保持することで、尿素による弊害を防いでいます。

言わば、TMAOやトリメチルグリシンはタンパク質の安定剤であり、尿素:TMAO = 2:1程度の割合で、体内に存在していると言われています。

ちなみにTMAOはタラなどにも多く含まれる物質です。

アカエイのエイ特有のアンモニア臭の発生経路

アカエイが漁獲され死んだあと、体内の大量に存在していた尿素やTMAOは分解されていきます。

尿素に関しては、加水分解によりアンモニアが発生します。これがアンモニア臭の原因です。

また、TMAOも体内の細菌が出す酵素により分解されTMOとなります。

TMOは生ぐさ臭の原因物質です。

タラの刺身を見たことがないのも、タラはTMAOが多く、漁獲後すぐにTMOが発生するため臭いがひどいことが要因のひとつです。

したがって、アカエイのエイ特有のアンモニア臭は、アカエイタ体内に多く含まれる尿素とTMAOが死後分解されることによって発生する、アンモニアとTMO由来の「アンモニア臭+生ぐさ臭」ということになります。

だからアカエイの臭いは単純なアンモニア臭ではないように感じるんだ~

2つ目の理由は「体サイズが大きすぎる」です。

アカエイはエイ類の中では比較的小型なエイ類なのですが、市場に流通している他の魚介類と比べると、とても大きな魚となります。

また、需要が低いため、重量当たりの単価が安いのに、重量だけはしっかりとある水産物であり、より多くの魚を市場に送り出したい

問屋や卸売業者からすると、場所をとり、重量をとり、単価が安いといった大きな問題が生じます。

体サイズが大きいため、運びにくいし、店頭に並べた際も場所をとる…

重量が15kg、体長1m程度のアカエイをそのまま購入する消費者は多くはないと思います。

アジやサバ、イカ類のように、無加工でも売れる魚とは異なり、体サイズが大きいアカエイは加工が必要です。

ただでさえ、単価の安いアカエイ…さらに手間のかかる加工も必要となると、アカエイを購入する鮮魚店も少なくなりますよね…

2つ目の理由は、直接消費者が避ける理由というよりは、問屋や仲卸業者、鮮魚店などの消費者がアカエイを避ける理由かもしれませんが。

アカエイの有効利用を考える際に、体サイズの大きさが問題となることが多いです…

3つ目の理由は「廃棄部が多い」です。

ほとんどの魚では、食べない部位があるけど、アカエイはどこを食べて、どこを食べないの?

アカエイの食べれる部位はヒレのところで、それ以外はほとんど食べれないんだよ

スーパーで魚を買った場合、エラや消化管などは食べずに廃棄するケースも多いかと思います。

もちろんアユやサンマのように、多くの部位が可食部である魚もいますが、ほとんどの魚には廃棄部があります。

下の図のように、アカエイの可食部は基本的にヒレの部分のみとなります。

そして、口、目、エラ、消化管、骨格がある中央部は廃棄部となります。

重量ベースで換算すると、アカエイは全重量の約半分が廃棄部となります。

アカエイの可食部と廃棄部

え~~せっかく大きなアカエイを釣っても、半分しか食べれるところがないの~?

そうなんだよ…10kgのアカエイを釣っても5kgの廃棄部が出てしまうんだよ…

もちろん、アカエイが好きな方は、ほほ肉も食べるとは思いますが、中央部の廃棄部重量はかなりの割合を占めます。

もともとの重量が大きいだけに、廃棄部の重量も大きく、廃棄コストもかかってしまうことあります。

これが、アカエイが避けられる一番の理由と言っても過言ではないかもしれません。

ちなみに、上述の議論はあくまでも人間がアカエイを食べることを仮定していますが、同じエイ類であるナルトビエイなどは、未加工でミール工場に運ばれ、豚の餌に加工されたりもしていますので、一概に重量の半分が廃棄部とするのは少し違うかもしれません。

ただ、せっかく美味しいアカエイなので、人間が味わい、廃棄部についても有効利用をしていく手法を考えていきたいものですね。